【入門編/9個で解説】SAPとは

概略、役割

SAPは、企業向けに統合基幹業務(ERP)を提供するSaaSソリューション名であり、提供する会社名です。会計管理を初めに、購買、在庫管理、人事管理など、企業のあらゆる業務を一元管理できるシステムを提供し、業務効率化とデータの一元管理を実現します。現在でもSAPはERPソリューションでもトップシェアであり、高単価案件にもよく登場します。今回は、そのSAPについて解説していきます。
SAPの特徴

導入されている業界
SAPは、様々な業界特有の業務プロセスに対応するため、標準機能とは別に業界向けテンプレートや拡張モジュールを提供しています。導入企業は業界ごとの課題に対応しながら、迅速かつ柔軟に業務を最適化できます。特に、大手企業、グローバル展開、データ活用した経営戦略を推進している企業での親和性が高く評価されています。主な業界と役割は以下の通りです。
製造業界
SAPの原点であり、最も導入実績が多い。生産計画、在庫管理、原価計算などの統合管理が強み。自動車・電機・食品など幅広い製造企業で採用。品質管理やトレーサビリティ強化のニーズにも対応しやすい点が特徴です。
小売業界
在庫最適化、販売分析、オムニチャネル対応に強く、世界中の大手チェーンやEC企業で利用。SAP S/4HANA RetailやCAR(Customer Activity Repository)が主力。消費者行動に基づいたリアルタイムな需要予測も実現可能です。
自動車業界
製造業の一種だが、サプライチェーンの複雑性とグローバル展開に対応するため、専用テンプレート(SAP for Automotive)あり。BOM管理やロジスティクス強化に強い。開発から販売、アフターサービスまでを一気通貫で管理できる点が評価されています。
エネルギー・公益業界
資産管理や規制対応、請求業務に強く、電力・ガス・石油系インフラ企業での導入が多い。SAP IS-U(業界特化モジュール)やPM(プラント保守)などが使われる。
料金計算の柔軟性や長期保守管理の効率化にも貢献しています。
金融業界
金融取引の記録・監査・分析を一元管理し、リスクの早期把握と対応を支援します。
AML(マネーロンダリング対策)や規制遵守の機能も標準装備されています。
顧客属性や取引履歴を分析し、CRMとしても活用できます。
SAPの構成

SAPでは会社運営に必要な基幹となる各業務領域を「モジュール」として独立しており、モジュール間のデータは密接に連携しています。業界や企業ごとに使用されるモジュールは異なりますが、ここでは代表的な4つのモジュールと、付随するサブモジュールについて触れていきます。

製造業を例で上げると、材料の仕入れ(MM)から販売・代金回収(SD・FI)までがモジュールで管理され、仕訳データは総勘定元帳(FI-GL)に集約されます。SAPではこれらの業務がリアルタイムに連携し、自動で会計処理や経営分析(CO-PC・CO-PA)まで反映されます。

その他にもHR(人事)、QM(品質管理)など様々モジュールがあり、導入企業ごとのニーズ合わせ、これらのモジュールを組み合わせて使用することで、網羅的にリアルタイムで一元管理できるのが大きな特徴です。
競合ソリューション

SAPの競合には、他のエンタープライズ向けERPソリューションがあります。SAPは、大規模な企業向けに包括的な業務統合を実現する強みを持っていますが、競合他社は特定の分野(人事管理・財務管理など)に特化したSaaSモデルを提供するケースも多く、企業の要件に応じて選択されます。

SAPに関わる職種とキャリアパス

SAPコンサルタント
SAPコンサルタントは、企業全体の業務フローを整理し、SAP導入の構想や設計、最適なソリューション提案を行います。経営目線で業務改革を推進する志向が強く、複数部門を横断する調整力と俯瞰的視野が求められます。キャリアの進展先としては、シニアコンサルタントやコンサルティングマネージャー、事業企画部門の管理職が代表的です。
SAPモジュールコンサルタント
モジュールコンサルタントは、FI・CO・SD・MMなど特定領域に特化し、業務設計や設定・テストを担います。業務知識と実務力を武器に、現場と密接に関わりながら業務改善を実現していきます。キャリアとしては、アプリケーションマネージャーやチームリーダー、業務責任者など現場寄りの管理職へ進むことが一般的です。
SAPプロジェクトマネージャー(PM)
SAPプロジェクトでのPMは、導入プロジェクト全体を計画・進行・管理し、スケジュールやコスト、品質を統括します。関係者を巻き込みながら成果を導くことにやりがいを感じる、リーダーシップ志向が強い職種です。将来的には、PMOマネージャー、大規模プロジェクト統括、ERP導入責任者、CIO候補など上位管理職へのキャリアが見込まれます。
SAPエンジニア
SAPエンジニアは、ABAP開発やシステム構築・運用など、SAPの技術基盤を支える役割を担います。構築スキルやパフォーマンス最適化への関心が高く、技術を極める志向の強い職種です。将来的にはテクニカルリードや開発マネージャー、IT部門責任者といった技術マネジメント職へのキャリアが期待されます。余談ですが、基盤より側の職種としてBasis担当エンジニアもいます。
SAPの歴史

SAPは1972年の設立から、現在でもグローバルでのERPにてトップシェアを築いている企業・ソリューションです。世界の多くの企業から求められきたSAPについて、ここでは起源から現在について解説していきます。
起源

SAPは1972年、元IBMエンジニア5名によってドイツで創業されました。初期はメインフレーム上で稼働する財務・在庫管理システム(R/1)を開発し、ナイロン工場やガラスメーカーなどが初期導入企業でした。リアルタイム処理と業務統合という新しい概念により、のちのERPの基礎を築きました。
初期の発展

1980年代にR/2を開発し大企業向けに拡張。ERP専用の開発言語ABAPもこの時期に登場しました。R/2はIBMメインフレームで稼働し、ヨーロッパを中心に広く普及。リアルタイムな業務管理と柔軟なアドオン対応が支持を集めました。その後、1992年に登場したR/3では、当時グローバル化が進む日本企業でも国際財務報告基準(IFRS)対応としてSAPを中心としたERP導入のブームが起きました。
中期の発展

クラウド化の流れを受け、2007年には中堅企業向けに「SAP Business ByDesign」を提供。オンプレミスERPからの脱却と、導入コスト・期間の削減を実現し、クラウドERP市場に参入しました。この時期から、SAPは「ERP=大企業専用」から「柔軟に選べるERP」への転換を始めます。
後期の発展

2010年代以降、インメモリデータベースのSAP HANAが開発され、爆発的なデータ処理性能を実現。これを基盤に2015年にはSAP S/4HANAを発表し、業務とデータのリアルタイム統合を強化。さらに「RISE with SAP」などのクラウド移行支援サービスも提供し、SaaS型ERPへの完全移行を目指すようになります。
現在のSAP

現在でもERPソリューションでトップシェアを持つSAPですが、オンプレミス型の旧システム(ECC6.0)から、クラウドベースのS/4HANAへの移行を推進中です。当初2025年に終了予定だったECCの保守期限は、2027年(有償で更に2030年)まで延長されましたが、国内のSAPユーザー(約2,000社)も、移行対応や新基盤への最適化を迫られており、大きな過渡期を迎えています。
クライアントに求められる人物像

SAPはERPシステムという特性上、ユーザービジネスと深く関り、今後の事業拡大を支える重要なものです。そんな大きな期待があるからこそ、クライアントも高額報酬を支払います。そんなSAPに携わるプロとして求められる人物像は以下の通りです。
業務 × IT のバランス感覚
SAPは単なる技術知識だけでなく「業務を理解した上で、ITに落とし込める人材」が強く求められます。特に業務部門と開発側の間に立って、要件をかみ砕き、正確に伝達・調整できる人物が重宝されます。コンサル・PMに限らず、エンジニアにも同様に期待されます。
自走力 × 信頼感
SAPプロジェクトは規模が大きく、トラブルや未確定な要素も多いため、指示待ちではなく自走できる人物が重宝されます。たとえ技術が不足していても「報連相を徹底し、誠実かつ責任をもって動ける」ことが信頼につながります。
学ぶ姿勢 × 継続性
SAPはバージョンアップやクラウド移行(S/4HANAやBTP)など、技術革新が継続する分野です。そのため「常に学び続け、最新技術や業務変化に柔軟に対応できる姿勢」がある人が評価されます。経験よりも「学ぶ意欲」と「成長する人材か」が見られる場面も多く、継続的なキャリアアップ志向は好印象につながります。
資格と学習方法

SAP認定資格(SAP Certified)
SAP認定資格は、ERPモジュールやABAP、Fiori、BTPなど多岐にわたる分野に対応しています。レベルは「アソシエイト」「スペシャリスト」「プロフェッショナル」の3段階に分かれ、基礎から実務経験者向けまで用意されています。キャリアやスキルに応じた取得が、専門性の証明につながります。
参考 SAP認定コンサルタント資格とは?種類・ パートナーランキング・新プログラムをご紹介(vol.76)
SAP公式トレーニング(SAP Learning Hub)
SAP公式のLearning Hubでは、サブスク形式で自由なタイミングに学習が可能です。日本語対応やコミュニティ機能もあり、初学者から経験者まで幅広く活用されています。集合研修やオンライン講座など、他の学習手段も併用可能です。
参考 電通総研 SAPを学習するには?SAP Learning Hubのすすめ(vol.75)
まとめ

SAPは、財務・調達・販売・人事などの基幹業務を統合管理し、業務効率と可視化を支えるERPソリューションです。特に大企業での導入が進み、リアルタイム連携や柔軟なモジュール構成が強みとされています。今後はS/4HANAやクラウド移行が加速し、スキルや資格の重要性も高まる中、戦略的な導入と活用が企業成長の鍵を握ります。
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